James Barnes – ジェームズ・バーンズ
祈りとトッカータ |
●原題:Invocation and Toccata
●グレード: 5 ●演奏時間:約9分 ●第20回定期演奏会
この曲は、日本でも人気の高い作曲家であるバーンズのとてもエキサイティングな曲です。曲は、荘厳な「祈り」の部分がドラを伴って激しく開始され、ホルンが厚いひびきでテーマを奏でます。その後ためらうような木管の動きの中に、オーボエやユーフォニウムのソロが現れ、再び重々しいホルンのテーマに続き、第1のクライマックスを迎えたのち「祈り」が静かに終わりを告げます。「祈り」が終わると、リズミックな「トッカータ」の部分が打楽器によって開始されます。フーガ風に開始された「トッカータ」は、途中変拍子を含みながら展開され、クライマックスでは木簡が自由に演奏する下で金管が祈りのテーマを厳かに再現します。 (第20回定期演奏会) |
イーグルクレスト |
●原題:Eaglecrest
●グレード: 4 ●演奏時間:約9分30秒 ●第13回サマーコンサート
アメリカ・ニューハンプシャー州のエクスプローラー・ウインド・シンフォニーとその指揮者T.J.ランドの委嘱を受けて作曲された。19世紀アメリカの詩人ウォルト・ホイットマンの「われのたわむれ」からインスピレーションを得ており、大空に遊ぶ「わし」や、その休息、そして再び飛び立ってゆくその姿などといった様々な情景を取りいれ、急―緩―急の構造を持つ演奏会用序曲に仕上げられている。中間部のアルトサックスのソロが美しい。1964年に発表うされた。作品番号49。 (第13回サマーコンサート) |
交響的序曲 |
●原題:Symphonic Overture
●グレード: 5 ●演奏時間:約10分 ●第22回サマーコンサート、第41回定期演奏会、第45回定期演奏会
この演奏会の一曲目にあたるこの曲は、現在カンザス大学の教授として教鞭を執っているJ.バーンズによって作曲され、アメリカ空軍軍楽隊によりアメリカ空軍軍楽隊の50周年きねんとして委嘱された作品である。 曲の図式は、華々しく勢いのある急の部と、しっとりとうたう緩の部、そして多彩に変化する二度目の急の部による、急―緩―急―コーダというまっとうな三部形式であり、曲頭、緩の部の頭、そして二度目の急の終わりには金管楽器による堂々たるファンファーレが現れる。全体としてエネルギーに充ちたこの曲は、シンフォニックステージ並びにこのサマーコンサートの幕開けをよく象徴しており、また新しい体制に入った今年の大阪大学吹奏楽団の初披露にふさわしい曲であるといえるのではないだろうか。 (第22回サマーコンサート)
この曲は、アメリカ人のジェイムズ・バーンズ(1949~)によって1991年に作曲されました。優美さと軽快さを兼ね備えたメロディが繰り出す響きは、まさに「symphonic」の言葉がぴったりでしょう。日本では、この作曲者といえば「アルヴァマー序曲」や「祈りとトッカータ」、「第3交響曲」が有名ですが、大阪大学吹奏楽団では「交響曲第4番『イエローストーン・ポートレート』」や「ヨークシャー・バラード」などを過去に演奏しています。 冒頭はコルネット、トランペット、トロンボーンの華やかなファンファーレで盛大に幕開けを迎え、オーボエのソロから始まる主題が至福の心地よさを生み出します。快活な金管と悠然とした木管の対比が映え、メロディは聴衆の胸を期待感でときめかせます。中間部で再びファンファーレ、そしてイングリッシュ・ホルン、サックス、ユーフォニアムの牧歌的ながら、ややメランコリックなソロをはさみます。何ともノスタルジックな展開に心を奪われるとともに、ハープが加わったソロは体が震えることでしょう。テンポが戻り前半の主題がさらに躍動感を増しながら再現され、再び冒頭のファンファーレを挟んだのち終結部分で華々しく終わりを迎えます。
今作品は、1941年に創立されたアメリカ空軍ワシントンDCバンド(The United Sates Air Force Band)の創設50周年を記念した委嘱作品です。そのことにちなみ、再現部冒頭のコルクが抜ける音は、50周年を祝う「祝祭」の開始の音となっています。同バンドは「華麗なる舞曲」(クロード.T.スミス)や「ハリソンの夢」(P.グレイアム)など数々の高度な委嘱作品を依頼してきました。作曲者は、委嘱当時のバンド指揮者であるジェイムズ・バンクヘッド中佐(在任期間:1985~1990)から、「ロマン派のスタイルで、規模の大きさと挑戦しがいのある難度を持った、コンサートのオープニングを飾るにふさわしい序曲」という依頼を持ち込まれました。実は、今作品は作曲者が一度完成した作品を破棄し、改めて書き直して作成されたという経緯があります。さらに、わずか2週間程度で完成させ、作曲者自身が「書き直したこの曲が前の曲より良いことは確かだから、ぜひ楽しんでほしい。」とコメントするほど、今作品には作曲者の愛着が感じ取れます。 アメリカを代表するバンドの委嘱作品にふさわしく、高度な技術が求められた作品に仕上がっています。しかしそれを微塵も感じさせない爽やかでキャッチーなフレーズは、今回初めてお聴きになった方にもきっとお気に入りの曲になると思います。
なお、今作品を演奏するにあたり、大阪大学交響楽団所属の武久磨菜さんにハープ奏者としてご協力いただきました。武久さんのハープが加わることで、今作品の演奏により奥行きを持たせることができたことと思います。短い言葉で恐縮ですが、この場を借りて深謝申し上げます。 (第41回定期演奏会)
アメリカ空軍ワシントンバンドの創立50周年を祝して委嘱、作曲されたJ.バーンズによる作品。軽快なファンファーレで曲が始まり、演奏会の幕開けにふさわしい管楽器や打楽器の明るいサウンドによって曲は進行していく。途中ゆっくりと音楽が流れていく場面では、美しくもどこか悲しい旋律がホールに響き渡る。全体を通して個性的なメロディーが絶え間なく続き、決め所ではシンフォニックな響きに満ち溢れるこの曲は、まるで一つの物語のようにも捉えられる。
J.バーンズが作曲した「序曲」の中では、「アルヴァマー序曲」や「アパラチアン序曲」などが有名だが、当楽団は今回あえてこの「交響的序曲」を選曲した。それには、オープナーにふさわしいゴージャスな構成をもつこの曲の魅力を、多くの人に伝えたいという団員の思いがある。 「交響的序曲」という若干固い日本語タイトルとは裏腹に、親しみやすいメロディーを存分にお楽しみください。 (第45回定期演奏会) |
交響曲第5番「フェニックス」 |
●原題:Fifth Symphony “Phoenix” opus 110
●グレード: 6 ●演奏時間:約45分 ●第44回定期演奏会
この曲は、2000年に陸上自衛隊中央音楽隊設立50周年を記念し、依頼を受けたJ・バーンズによって作曲されました。約45分のこの曲は、6パートのAntiphonal Trumpet を含めた大編成の曲である。曲中では、花道でトランペットが華々しく演奏されます。この曲には“Phoenix( 不死鳥)”という副題が付けられており、第二次大戦後の日本の復活の精神を描いている。「炎の中に飛び込み、その灰の中からより輝かしく生まれ変わるという不死鳥の伝説のように、日本は甚大な被害から立ち直り、以前よりも大きく、尊敬される国へと復活を遂げた。」とバーンズは述べている。
Ⅰ.Eulogy 非常にドラマティックな葬送曲から始まるこの楽章は、太平洋戦争で苦しみ、死んでいった日本軍、そして連合国軍の兵士への鎮魂のために書かれた。テューバによってバーンズの交響曲第3番にも似たソロが演奏され、ファゴットへと受け継がれていく。そして曲は一旦速度を上げ、盛り上がる。Antiphonal Trumpet と渦を巻くような木管群によって作り出される異様な雰囲気は、破壊や恐怖などを呼び起こしている。そして、再び冒頭の葬送曲が奏でられ、木管群の恐怖を煽るような旋律の後に、戦争への憂いをこめながら締めくくられる。 Ⅱ.Scherzo この楽章では、日本人の活気と、献身的で気品のある精神が描かれている。前楽章とは対照的に、華やかで快活な音楽となっており、終始早い3拍子で表現されている。明るく軽やかなパッセージと流れるような美しい旋律がうまく組み合わされている。 Ⅲ.Reverie (Daydream) この楽章は、暗く感傷的な音楽となっている。兵士たちの恐怖心、もう2度と会えない遠く離れた家族や愛する人への思い、孤独、寂しさ―そんな感情を描いている。“Daydream( 白昼夢)”という副題の通り、目の前に繰り広げられる惨劇がまるで夢のように酷い様子を表現している。夢であってくれ、夢なら覚めてくれ、そんな兵士たちの悲痛な叫びが聞こえてくるようだ。前奏の伴奏には、暗くない和音が使われており、この伴奏によって現実と幻想の狭間にいるような感覚を覚える。途中、盛り上がって美しくも物悲しい旋律がトゥッティで奏でられる。 その後も悲壮感がありながらどこか幻想的に締められる。 Ⅳ.Jubilation 最終楽章にあたるこの楽章は、日本が未来へ向かって復興していく姿と、それを成しえた日本人の勇気と活力を讃えている。また、この楽章には国歌の「君が代」をモチーフとしたテーマが登場する。冒頭では、Antiphonal Trumpet が再び登場し、金管群の壮大なファンファーレから始まる。速いパッセージによる展開のあと、様々な楽器によって繰り返しテーマが奏でられた後に、緩やかな音楽になり、チャイムへとつながる。そして、「君が代」のフレーズが木管楽器によるカデンツァの合間に奏でられ、日本人の温かい心への感銘と、日本の風景の美しさに対する作曲者の愛が表現されている。その後、再び冒頭のファンファーレが奏でられ、スピード感を保ちながら終わりへと駆け抜ける。
戦争を経験したことのない私たちにとって、この曲のテーマは大変難しいものでした。しかし、大切な人を失う悲しみ、そしてそれを乗り越えてゆく強さは私たちの誰もが持ちうるものです。少しでも皆さんの心の琴線に触れられる演奏ができれば、と思います。 (第44回定期演奏会) |
ビューティフル・オレゴン |
●原題:Beautiful Oregon
●グレード: 5 ●演奏時間:約9分 ●第33回サマーコンサート
アメリカのオレゴン州の吹奏楽団、オレゴン・シンフォニック・バンドの設立20周年を祝って、この曲は書かれました。作曲したジェイムズ・バーンズがオレゴン・シンフォニック・バンドに楽譜と共に送った手紙には、「オレゴンの自然は非常に美しく、感銘を受けた」と綴られています。そんなオレゴンの魅力が凝縮された曲となっています。
曲は、金管楽器の鮮やかなファンファーレから幕を開け、徐々に旋律部の楽器が増え、この曲のテーマである8分の7拍子のメロディーへと移っていきます。このリズミカルな主題が転調していく中で様々な楽器やリズムで重ねられ、最初のクライマックスを迎えます。 中間部はユーフォニアムとファゴットのデュエットから始まり、オーボエとイングリッシュホルンが中心となって、優しく柔らかな旋律を奏でます。オレゴンの自然の壮大さが思い浮かぶような、そんな場面です。 そして曲は鋭さを持った変拍子を伴って再び盛り上がり、冒頭の8分の7拍子のメロディーへと続きます。終盤、同氏の作品「交響曲第3番」の4楽章を彷彿とさせるような重厚感溢れるフレーズの後、中間部のゆったりとしたメロディーが再現されます。その後は息もつかせぬ速さで、ラストまで突き進みます。 吹奏楽の巨匠、ジェイムズ・バーンズの、オレゴンへの思いが詰まった曲をどうぞお楽しみ下さい。 (第33回サマーコンサート) |