ヤン・ヴァン=デル=ロースト『いにしえの時から』阪吹第51回定期演奏会曲紹介🌷【#阪吹ブログ】
こんにちは!Tuba1回生のトッフェルです!
阪吹ブログ初登場で日本語を間違えないか少し緊張していますが、文学部の誇り(?)にかけて頑張ります。どうかお手柔らかに…
今回は「いにしえの時から」の曲紹介をさせていただきます!作曲者はJan Van Der Roostです。
この曲は私が今回の定期演奏会で一番好きな曲です!
今年度は精華女子高等学校が全国大会で演奏していた曲ですね、一度耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
多声音楽 “ポリフォニー”
2つ以上の旋律を同時に重ねる多声音楽に“ポリフォニー”と呼ばれる形式があります。
『いにしえの時から』は、15世紀から16世紀のルネサンス期にポリフォニーを駆使して黄金時代を迎えた、“フランドル楽派(フランダース・ポリフォニスト)”と呼ばれるベルギーの作曲家たちの音楽にインスパイアされた作品です。
タイトルには“Ancient”という単語が使われていますが、ここでは“太古”とか“古代”をさす意味では使われていません。 “Ancient Times”は、正しくは“フランドル楽派”が活躍した時代をさしているのです.
ただ、作曲者はこの作品の中で、古きよきその時代の旋律やリズムの模倣をした音楽を書いたわけではありません。
作品は、あくまで21世紀の音楽として書かれ、ポリフォニーを現代技法の中で昇華させているのです。
不安と期待・スリリングな音楽
曲は鍵盤楽器による不規則なリズムで始まります。
やがて1本の旋律と、それのエコーのような旋律をユーフォニアムが奏でて主題が提示されます。霧が晴れる前のような、楽派としての形式が確立される前のつぼみのような不安と期待の混じった音楽が続きます。
ポリフォニーの技法を現代の吹奏楽音楽に昇華させた結果、同時進行する動きは、曲の始めに近いところで現れるサクソフォン・セクションやトロンボーン・セクション等の各アンサンブルだけでなく、木管、金管、打楽器の別なく奏でられます。
その後、冒頭が再現され、ティンパニのソロに導かれて曲は徐々に速度を上げていきます。
打楽器アンサンブル、トロンボーンの強烈なグリッサンドを経て、楽譜上で“Estampie”と記された部分に入ります。
エスタンピーとは中世ヨーロッパのダンス、楽式を指しており、楽器群の組み合わせや速度を変化させながら、手加減のない超絶技巧満載のスリリングな場面としてつぎつぎ現れます。
この曲の指揮者、久保田先生絶賛のトロンボーンアンサンブル、きっとお楽しみいただけることと思います!
後半部分はフリューゲルホルンによって自由なテンポで始まり、トランペット、サクソフォン、クラリネット、ホルン、フルート、と管楽器のソロが続いていきます。
アドルフサックスへの敬意・賛歌
その後、楽譜上で“Hommage a Adolphe Sax”と書かれた場面になります。
この作品の後半には、ベルギー出身のサクソフォンやサクソルンの発明者アドルフ・サックスへの敬意が込められています。
彼は19世紀を生きた人間なので、15,16世紀、中世のポリフォニーの音楽の後にこのアドルフ・サックスへの賛歌に至る流れは時系列的にも非常に美しいように思います。
コーダに至る前に現れる心が温まるような美しいメロディーとハーモニーが聴かれる箇所がその部分です。
この部分で重要な役割を担うユーフォニアムによって歌われるオマージュの旋律は徐々に盛り上がり、クライマックスを迎えます。
涙腺崩壊間違いなし!でも…
同作曲家の名曲『カンタベリー・コラール』に似た、和音の美しい重なりに幸福感と、作曲者のアドルフ・サックスへの感謝や敬意を感じることができます。
涙腺が緩むこと必須の「安らぎ」と「感動」を味わっていただけると幸いです。
クライマックスを迎えた後はサクソフォン・アンサンブルが再びオマージュの旋律を奏で、この場面は終わります。
奏者も泣きそうになるほど美しいこの場面ですが、泣いている暇はありません。まだここから、連符やら高音やらが盛りだくさんなのです…。
やがて、バンド全体の合奏による激しい連符、クレッシェンドを経てフィナーレへ突入します。
“Con grandezza!”(おおらかに、壮大に) と楽譜に書かれたこの場面では、各セクションがカノンのように重なり合いながら主題を壮大に歌い上げます。
この場面は久保田先生がその日の気分で速度を変えるため、奏者は必死に指揮者と連携して演奏します。
集中して先生の指揮を見なければずれてしまうところでもあるので、演奏難易度は高くないこの場面ですがある意味一番崩壊しやすいところでもあります。
本番、久保田先生の気分が私たちと一致することを祈っています。笑
そして”Presto”。曲はいきなりスピードを上げ、息つく間もなく幕を閉じます。
最後の一音が鳴り終わったとき、奏者もお客様もすっきりとした開放感、達成感を味わえたら、この曲は大成功ではないでしょうか。
定演まで残り時間は少ないですが当日、ステージに上るまでメンバー一同こだわり抜きたいと思います。
是非お楽しみに。12/24(土) 東大阪市文化創造会館でお待ちしております。