「ルイ・ブルジョアの讃美歌による変奏曲」曲紹介

こんにちは!阪吹2回生副指揮者の大泉晴絵です。 今年ももう12月なんですね、だんだん一年が経つのが早くなっている気がして、老いを感じます👵 来年度の阪吹も応援よろしくお願いします🐇

今回は定期演奏会で自分の指揮する『ルイ・ブルジョアの讃美歌による変奏曲』の曲紹介をさせて頂きます!C.T.スミスの作曲する吹奏楽曲はコンクールやコンサートなどで頻繁に演奏される人気曲が多いのですが、この曲は『華麗なる舞曲』『Festival Variations 』と共に「スミス三部作」と呼ばれるほど高い人気を誇ります。 なぜこの曲がそれほどまでに人気なのか、どんな魅力があるのか、今回阪吹で演奏する上で工夫している点など、たくさんお伝えしていこうと思います!

「ルイ・ブルジョアの讃美歌」って何?

タイトルにもある「ルイ・ブルジョワの讃美歌」とは、この曲で変奏されている主題のことで、1562年に出版されたジュネーブ詩篇歌の中に登場します。

作曲家であり、ジュネーブの聖ペータース教会の主唱者であったルイ・ブルジョワが作曲した「詩篇旧100番”Old Hundredth”」がこの変奏曲の主題で、この曲は現在も歌い継がれる有名な讃美歌の一つです。

宗教改革者カルヴァンは1537年のジュネーブ市参事会にて 「詩篇歌は私たちを励まして、この心を神に向け、賛美をもって神の御名があがめられるように祈る熱意へと私たちを駆り立てることができるのであります。」 と、教会で詩篇歌が歌われる事を主張し、神の言葉(聖書)に基づく詩篇歌が福音説教と同じ地位にあるものと述べました。その後カルヴァンは詩篇歌を通じて神を賛美するために、その歌詞を死語であるラテン語でなく庶民に親しみのあるフランス語で歌うことを主張し、自ら翻訳をしたといいます。

 当初詩篇歌は、「神の言葉」の言葉の意味そのものを歌い継ぐことを目的に作られたためジュネーブでの原曲出版の際は単旋律に限定されていました。確かに、言葉を聞き取るだけならハーモニーや伴奏がない方がわかりやすい気もしますね。しかし、のちに家庭で歌うことを考慮して4声編曲が出版されました。  

単旋律のメロディーは、教会旋法とシャンソンがブレンドされた優雅なもので、1オクターブ内に収まる美しさと1音符に1シラブル(単語の音節)が充てられる明快さも相まって、その後のプロテスタント教会の讃美歌に大きな影響を与えました。

Claude Thomas Smithココがすごい!

作曲者スミスはアメリカのミズーリ州に生まれ、ホルンと作曲をセントラル・メソジスト大学で学びます。大学時代には朝鮮戦争に軍楽隊として従軍しており、以後もアメリカ軍楽隊(アメリカ空軍、海軍など)に委嘱されて作品を多く書いています。演奏には高度な技術とスタミナを必要とし、『ルイ・ブルジョアの讃美歌による変奏曲』でも冒頭から木管楽器を中心とした高速の連符があったり金管の高音のファンファーレがあったりと、スミスの楽曲の特徴が色濃く反映されています。  

今回の変奏曲では疾走感のある冒頭を終えた後に、原曲のコラール(第一変奏とする)が提示され、その後オーボエによって第二変奏が奏でられます。この第二変奏の旋律は最低音がE、最高音がFで、原曲で1オクターブ内に収まるメロディーの限界を早速やぶってきます。カルヴァンの時代、1オクターブ内で作り出すことに意味があったこの主題を、早速打ち壊してのびやかかつ自由な世界を展開するあたりに、スミスの面白さがあると思います。  

ゆったりした主題の変奏ももちろん、疾走感のある部分もとても魅力的です。Tpソロによって提示される変奏は変拍子も織り交ぜた軽快な音楽で、伴奏で連符を使用したり「神の楽器」トロンボーンに主題を裏で吹かせてみたりと、盛り沢山な内容になっています!聴衆が飽きることなく自然と聴きたいと思うような、わかりやすく、それでいて味わい深いハーモニーや楽曲進行をお楽しみ頂けると幸いです。

どう演奏する?

 この曲は超絶技巧に加えハーモニーや音程の丁寧な造り込みが要求されている高難易度な曲として知られています。今回阪吹で演奏する上で、ただ単に連符の指が回る、アーティキュレーションの指示を守れる、といった楽譜上の技術的部分はもちろん、讃美歌の荘厳な雰囲気を帯びた演奏にしたいです。 高校の部活みたいに毎日合奏したり、パート練習やセクション練習をする時間が十分に取れない中で、一回一回の合奏の密度を高めて自分たちにできる最大限の演奏をしたいと思います。

元々、原罪(キリスト教における人間は生まれながらにして罪を負っているという考え方)を背負ってくれたキリストに対する感謝を表すために生まれた讃美歌ですが、今回の演奏会では演奏会に来て下さったお客様や共に練習を重ねた仲間に向けての感謝を込めて、心のこもった演奏をしたいと思います。

12/23(土)はぜひあましんアルカイックホールにお越しください💁‍♀️

第52回定期演奏会についてはこちらをご確認ください。