「Fifty Shades of E」曲紹介
こんにちは。チューバパート3回生のふくさです。
今回は定期演奏会第2部2曲目に演奏するJohan de Meij作曲“Fifty Shades of E”の曲紹介をさせて頂きます。
元々ヨハン・デ・メイが好きだった私はサマコンでも“Cloud Factory”という曲を応募していたのですがそれが叶わず、今回の定期演奏会ではデ・メイリベンジマッチの形となりました。最後の最後で念願が叶いとても満足です。
比較的最近に作曲されたこの曲、存じ上げない方も多いかと思われますし、定演パンフレットに掲載予定の曲紹介が分かりづらく非常に後悔しているため、今回はなるべく丁寧に分かりやすい説明を心がけます。
そもそも“Fifty Shades of E”ってどういう意味なの?
“Fifty Shades of E”は元々ヨハン・デ・メイが既に作曲していた“Evolution”というファンファーレバンド用の曲を吹奏楽版に編曲したものとなります。またこの曲は、第6回国際作曲コンクール“City of Muro 2017”で1位を獲得しています。曲名の解釈には“Evolution”の作曲家コメントが参考になります。
元々“Evolution”は国際ダーウィンの年にちなんだものとして作曲を依頼されており、その際単にダーウィンに関する音楽を作曲するよりも音楽的な進化をテーマにした方が面白いと考えたデ・メイによって、Eという音が主軸に据えられました。このEの音をデ・メイは“a small musical Darwin”と表現しており、曲全体にわたってEを中心に置いた主題が変化していく様を「主題の進化」と捉えているのではないかと思います。曲が進行していくにつれて発展・変化していき曲の後半になってやっと主題の本当の形が表れるというのも、今(すなわち曲の終わり)のほんの少し前になってやっと人間に限らず生物が進化して現在の姿形になったということ、さらには進化の歴史の重みを想起させるのではないかと思います。そのため、“Fifty Shades of E”という曲名も、進化の過程で様々な姿を見せて変化していくEを表しているということになるのではないでしょうか。
原文を読みたい方向けにリンクも貼っておきます。
https://johandemeij.com/music/profile/1046 (Evolution)
https://johandemeij.com/music/profile/1088 (Fifty Shades of E)
“Fifty Shades of E”はどんな曲?
曲名に関して先ほど議論した際にも述べましたが、この曲はEという音、そして主題が変化していく様を楽しむ音楽になります。曲の最初では姿を隠し、誕生の予感のみにとどまった主題も、不完全な形で管楽器全体のユニゾンによって現れます。この主題は時に荘厳に、時に動きを持ちながらも形の定まらないカオスに、時に攻撃的に姿を環境に合わせて変化させていきます。そして様々な変化をしてきた主題は終盤になって初めて真の姿になります。曲の最後にはこの主題がE→G♯→HというEメジャーコードの構成音に変化しながら現れ、7オクターブに渡るEのユニゾンによって曲は終結します。
Eで始まりEで終わる。主題が「進化」し姿を変えていく過程を目にした皆さんは同じEの音をどのように感じているのでしょうか。
推しポイント
チューバ・コントラバスから始まる主題のフーガの部分です。E→H→F♯→…のように5度ずつずらした調で、加えて音域が高い楽器群に受け渡しながらカオスなフーガが形成され、さらには先ほどと異なり8分音符を中心とした刻みにより音楽が動き始めます。このカオスはトランペットによってEから始まる最初の主題と同じ形が奏でられることによって終わりの兆しが見え始め、さらに主題を最高音域であるピッコロの群が奏で終わると同時に刻みの楽器群のリズムが一致します。ここで混沌から秩序が生まれだし、少しずつ形が明確になっていきます。
一番の推しポイントはこの後のトランペット・トロンボーン・ホルンによるアンサンブルです。雰囲気を一変させ、力強く高らかに歌い上げられる音楽は1番の聴き所です。その後様々な調性がぶつかり合う強大でカオスなユニゾンで主題が奏でられ、ホ長調(Eメジャースケール)へと終着します。
この「混沌→不完全な秩序」が音楽の時間的な流れで徐々に変化していくことにより表現されているのが非常に面白いと思います。
おわりに
曲だけを聴くと複雑に思えるかもしれませんが、結局はEという音が様々な場面で現れた際に、同じEでも担当楽器や音楽の進行次第で違う響きに聞こえて面白い!曲の中で一貫して用いられている主題が変奏され、調を変えて現れることで曲の雰囲気や時間の流れが変化しているように感じられて面白い!のように考えると単純かもしれません。
たったの17分で色々音楽をつまみ食いしながら楽しみ方を知ることができるという意味ではコスパは良いです。これは奏者も同じです。難易度の高さに注目しがちですが、そもそも音楽ってどういったものでどう楽しむものか、ということが曲を通して再確認できる点で非常に有用です。
後はそれが観客の方々に伝わるような表現力をさらに深めることができるのか、本番まで残り練習期間も少ないですが、こだわりきりたいと思います。
長々とお読み頂きありがとうございました。
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