楽曲紹介「Concerto for wind ensemble」

こんにちは!

今回は第43回サマーコンサートで演奏する『Concerto for wind ensemble』について説明します!

交響的序曲や宇宙の音楽、ブリュッセル・レクイエムなど吹奏楽の超王道の曲が目白押しな今演奏会の中で異色を放つこの曲は、2021年にアメリカ人作曲家Kevin Day によって書かれた作品です。

作曲者の両親はアメリカのウエストバージニア州出身で、父親はヒップホッププロデューサー、母親はゴスペルシンガーでした。作曲者は幼少期から両親の影響でヒップホップ、ジャズ、ゴスペルなどを聴き育った一方で、オーケストラでのユーフォニアムやチューバの演奏も経験しておりクラシック音楽も学んだそうです。 自身の人生で蓄積されてきたこれら様々なジャンルの音楽の経験と知識を融合させ、この曲を作曲したと語っています。 楽曲は5つの楽章に分けられます。

Ⅰ Flow

2/4、3/4、3/8、5/16、9/16、など変拍子が多用されます。目まぐるしくテンポは移り変わりますが、思わず口ずさんでしまう中毒性があるメロディが特徴的です。EsCl、Tuba、S.Sax、Euphのソロにもご注目ください。 「Flow」といってパッと連想されるのはヒップホップにおける「フレーズに抑揚をつけて歌ったり韻を踏んで歌い回す」という意味です。決まった感覚で現れる5/16や特徴的な位置のアクセント、滑り歌うようなメロディもこの「Flow」からきたものかもしれません。

Ⅱ Riff

快活なハイハットによって幕が上がります。疾走感のある楽章で、3拍子の中に4つの音が並んだまま進行したりシンコペーションが効果的に用いられたりします。 この楽章の題名である「Riff」とは楽曲の中で繰り返し使われる短いフレーズのことです。Riffで有名なのはディープパープルの『smoke on the water』冒頭のギターソロです、みなさんお馴染みのてってってーてってっててーのあのメロディです。 この楽章でもバスクラリネットの冒頭のソロで提示されたフレーズが楽章の随所で登場します。BsCl、S.Sax、B♭Cl、B.Saxに大きなソロが割り当てられています。ご注目ください。

Ⅲ Vibe(for Dad)

「父に」と書かれているこの楽章は作曲者が父親に贈った楽章です。曲調は一転してスローテンポになります。メロディの合間に何度も出てくる3連符の合いの手が印象的です。曲は淡々と進んでいるように見えて変拍子がアクセントを加え展開していき、最高潮に達したのち、再び落ち着きを取り戻して締め括られます。 個人的なお気に入りは5/8拍子の中で4分音符の感覚でリズムを刻むドラムです。シンプルですが小節ごとにアクセントの入る位置が変わる奇妙な感覚が非常に面白いです。

Ⅳ Soul (for Mom)

4楽章は作曲者が「母に」送った楽章です。 拍子は9/8と12/8で統一されており、幻想的で心安らぐ音楽となっています。ゴスペルシンガーの母に向けて書いた楽章というだけあって、歌うようなフレーズが散りばめられています。 Hr、EsCl、A.Sax、Flが各所で織りなす情緒的なソロはもちろんのこと、楽章の盛り上がりで炸裂するTbのソリは聴き逃せません。

Ⅴ Jam

最終楽章は高速(♩=160の1拍に5連符)の鍵盤楽器のソロによって幕が上がります。Jamとは、奏者が集まって即興でセッションをすることを表します。楽譜はありますが、毎回違った表情を見せる一発勝負の緊張感を持った楽章になっています。 楽章音楽の場面以外では「渋滞」や「混雑」という意味でよく使われますが、言葉通り終始Tutti の音楽が力強く進んでいきます。各所でEsCl、Bsnのソロが奏でられますが楽章の最高潮ではTpソロ、そして全楽章の締めくくりにDrumソロが炸裂し、爽快に幕をおろします。

今回の演奏では各パート人数を1人(負担の大きいTp1st、Hr1stは2人)に減らして36人で演奏しています(阪吹は通常60~70人編成)。 慣れ親しんだ吹奏楽とは違った、協奏曲のアンサンブル感が楽しい緊張感のある一曲となっています。 人数が減って個人の負担がより増すこの曲がどのような演奏になるかを楽しみに、当日ホールでお会いしましょう!

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