「ブリュッセル・レクイエム」楽曲紹介

こんにちは!

今回は第43回サマーコンサートのトリ曲であるB. Appermont作曲“ブリュッセル・レクイエム”の曲紹介をしたいと思います。

ブリュッセル・レクイエムとは?

吹奏楽の定番である本曲ですが、もともとは英国式ブラスバンドのために書かれた曲です。ブラスバンド曲の吹奏楽版は難曲が多く、本演奏会で演奏する“宇宙の音楽”も原曲はブラスバンドです。

さて、まずは“ブリュッセルレクイエム”が作曲された背景についてみていきたいと思います。この曲は実際の事件をもとに作曲されました。その事件とは、2016年3月22日朝、ベルギーの首都ブリュッセルで発生した連続爆破テロ事件です。ブリュッセル国際空港やEU本部近くの地下鉄マールベルク駅において発砲・爆発が相次ぎ、ベルギーは恐怖のどん底に突き落とされました。この事件は、自爆テロを起こした犯人3名を含む35名が死亡、340名以上が負傷するというベルギー最悪のテロ事件となりました。

テロ事件をテーマにした本曲ですが、作曲者が表現しているものは事件そのものではなく、このテロ行為により引き起こされた恐怖、悲しみ、怒り、また希望や信仰などの人々の内心です。

音楽の展開は、1.<Innocence>、2.<In Cold Blood>、3.<In Memoriam-We Shall Rise Again>、4.<A New Day>の4楽章構成で、楽章間は途切れることなく演奏されます。

本曲を聴く上で注目していただきたい点は、一曲を通じて引用されているフランス童謡“Au Clair de la Lune(月の光に)”です。作曲者はこの曲を、序盤では「テロで破壊された無垢の象徴」として、終盤では「復興の可能性の象徴」として、この童謡を引用しています。ベルギーではフランス語が公用語として使われているので作曲者はこの曲を引用したのかもしれません。まず初めに鍵盤楽器により「月の光に」が演奏され、その後さまざまな楽器・変奏で曲中にちりばめられます。

第1楽章<Innocence>

曲はクラリネットの優美なソロから始まり、続いて鍵盤打楽器により“月の光に”が演奏されます。私は無垢というタイトルから童謡で小さい子供が寝かしつけられている平和な日常を表現するかのような音楽を感じ取ります。そして優雅な音楽が広がる中、トランペットとハイハットシンバルが唐突に音楽を切り裂きます。このトランペットも“月の光に”の変奏になっています。きつく、するどいスタッカートは突然にやってくるテロを表現しているかのようです。

第2楽章<In Cold Blood>

前楽章のトランペットのメロディーが変拍子の音楽で展開されます。第2楽章の音楽は恐怖、怒りなどの人々の強い感情を表しているように思います。この楽章の注目ポイントはソロです。トロンボーンの跳躍が激しく圧巻のソロ、シロフォンの駆け抜ける連符などなど、聴きどころ満載です。楽章終盤では木管の連符を裏にTuttiで再び「月の光に」の旋律が奏でられます。筆者個人的に大好きなセクションなのでぜひご注目ください。そうして、音楽は静かに幕を引き第3楽章へとつながります。

第3楽章<In Memoriam-We Shall Rise Again>

さて第3楽章はステージオフのトランペットのソリ、打楽器の伴奏で始まります。その後重々しい低音メロディーによって追悼の意が表されます。この楽章での個人的推しポイントはユーフォソロと終盤の旋律裏で華麗に演奏するユーフォの連符です。ぜひ耳を傾けてみてください。さあ曲は未来への希望を感じさせるような盛り上がりを見せ第4楽章へ。

第4楽章<A New Day>

いよいよ、最終楽章です。楽章タイトルから読み取れるように、人々が未来への前向きな気持ちを表したような音楽が広がります。第4楽章の聴き所は何といっても各パートによるアンサンブルです。ジャズ風の音楽で演奏されるトロンボーンやサックスのアンサンブルは聞き惚れること間違いなしです。第4楽章途中で一度音楽が落ち着きます。冒頭を想起させる音楽になっており、人々が少しずつ日常を取り戻していく姿が表されているのかもしれません。そうしてまたハイテンポな音楽で畳みかけるように演奏は終了します。

最後に…

演奏会を締めくくる本曲。阪吹の演奏をお聴きいただき、作曲者がこの曲に込めた思いを感じていただければ幸いです。2024年6月23日(日)は是非、あましんアルカイックホールまで足をお運びください!