「交響曲第0番」—楽曲紹介

こんにちは!Tuba3回生の大泉晴絵です。

今回は本演奏会先生曲の大トリ『交響曲第0番』の解説をさせて頂きたいと思います。ブログということで、ラフな小話も挟みつつ、より深く曲を知って頂けると嬉しいです☺️

曲の概要

この曲は、ベルギーのゼーレにある聖シシリア吹奏楽団の創立175周年を記念して、同楽団により委嘱された楽曲です。

作曲者のバルト・ピクールは、同楽団の旗にも使われている「不死鳥は亡骸より飛び立つ」というテーマをもとに作曲活動を進めたと言います。このテーマは世界各地で様々な伝説として伝えられていますが、今回の交響曲第0番はエジプトギリシアの伝説を引用しています。

交響曲は通常第1番から始まり、数字の順に発表されていくイメージですがこの曲は「0番」ということで異色なイメージを受けますね。

交響曲第0番というと、ブルックナーのそれが有名かと思います。ブルックナーの0番は実は交響曲第1番の後に書かれており、「じゃあ2番じゃん」と突っ込みたくなりますね。

ここからは細かく交響曲第0番を見ていきましょう!

第一部:太陽神「ラー」のファンファーレ

「太陽神「ラー」に捧げる祝典的頌歌(しょうか)。」

ラーとはハヤブサの頭を持つ姿で描かれることの多いエジプト神話における最高神です。楽曲はClarinetセクションのpppp のハーモニーによる怪しげな雰囲気の中TubaSolo により幕が上がります。FgTimpPiccsolo が続き、打楽器のアンサンブルを経たのちにTrumpet のファンファーレが鳴り響き、木管楽器を中心とした異国情緒豊かな音楽が展開されます。その後、再度ファンファーレが鳴り響き、勢いを保ったまま音楽は第二部へ進みます。

この楽章で最初に目につくのはTrumpet のファンファーレでしょう。楽譜に記載がある通り、1st2nd3rd でステージの左右中央に分かれそれぞれでファンファーレを演奏します。

Trumpet のファンファーレ:”stage front left(right, middle)“の指示が

視覚的にも楽しんでいただけると幸いですし、聴く場所によってファンファーレの聴こえ方も変わってくる面白さがあると思います。

第二部:源にて、不死鳥の歌と踊り

「ペルシアのとある場所で、不死鳥がひっそりと誕生する。その歌や踊りが太陽神「ラー」の目に止まり、太陽神は毎日正午に不死鳥の元を訪れ、それを見るのを楽しむ様になる。」

穏やかな情景がClarinet セクションにより描き出され、続きEuphoniumEsClarinet が情感豊かなSolo を受け持ちます。

ここではPiano が伴奏に加わりますが、右手で16部音符(4連)、左手で3連符のリズムをとっています。幻想的な雰囲気をソリストに合わせて創り出す、難しさのある箇所ですが、ぜひ本番でも注目して聴いてみてください!

その後、楽曲は5/8のリズムを基準としながら転調を繰り返し、リズミカルな合いの手を挟みながら進行します。第二部は次第に収束するかに見えますが、ClarinetアクロバティックなSolo (画像)が演奏され再び緊張感を帯びたのち、Trombone によるSolo が演奏され、楽章は再び盛り上がりを見せ終結します。

第二部中盤にて、Clarinet 1st によるソロ

第三部:死と復活

「やがて齢を重ねた不死鳥は、自分の死を予期する。様々な香料やハーブを用いて高い木の上に『巣』を作り、その中にうずくまると、太陽の光でその巣が燃え上がり、不死鳥は灰の中から若く、力強い姿で蘇生する。」

第一部を想起させるようにTubaA.Sax が怪しげなSolo を奏でたのち、音楽はヒートアップし低音群と金管楽器の力強いコラールが続きます。音楽は一転し静寂の中でHr Tb が哀愁漂うコラールを奏で、TpSolo に受け継がれます。その後は対照的に、復活を表現する高らかなファンファーレが演奏され、第三部は幕を閉じます。

第四部:ヘリオポリスへの飛行、「ラー」への祝典

「若く生まれ変わった不死鳥は、燃え残った「巣」を没薬の卵に閉じ、ヘリオポリスの街にある太陽神の神殿へ運び、捧げ物とする。」

第四部 Clarinet 1stの譜面

題の通り上空から飛行しているような爽快感をもって楽曲は始まり、Hr のファンファーレによって現実に引き戻されます。ここで注目したいのが冒頭、60小節にわたって演奏されるClarinet の伴奏です。♩=132の16分音符で繰り出される共同作業に頭が上がりません。(連符の画像)

その後、木管の伴奏と共にEnglish Horn が感動的なメロディを奏で、呼応するように金管を伴ってTp の旋律が浮かび上がります。祝典に相応しい晴れやかな心温まる場面です。

金管のコラールは徐々にスケールを拡大し、Tutti によるフィナーレが演奏されます。ここでは交響曲のエンディングらしい荘厳な最終和音が鳴らされますが、これですべてが終わりではなく、再び曲の冒頭に戻る事(Clarinet によるp の音楽)で、一つの周期が完成する事を表していると言えるでしょう。 王道のff の締め括りを予想させる第4部の進行の中でいい意味で裏切ってくるラスト、非常にかっこいいです。最後のClarinet セクションは冒頭と全く同じハーモニーに戻り1stF の音を任せて曲は締め括られます。どうか残響まで余さず聴いて、拍手を下さると嬉しいです。

(フライングはダメですよ!)

冒頭のスコア(左)と曲の最後の場面(右)

定期演奏会詳細はこちらから