Nakahashi Yoshio – 中橋愛生
科戸の鵲巣―吹奏楽のための祝典序曲 |
●英題:”Blessed Promising Future” Festal Overture for Symphonic Band
●グレード: 5
●演奏時間:約12分 ●第45回定期演奏会
中橋愛生氏により2004年に作曲された。読み方は「しなとのじゃくそう」。「科戸」とは「し」が「風」、「な」が助詞の「の」、「と」が「場所」なので、「風の起こる場所」の意味。また中国の諺に「鵲巣は風の起こるところを知る」というものがあり、これは鵲(かささぎ)がその年の風の具合を予見して巣を作る本能があると言われていることから「未来を予知する能力」の例えを表しているそうだ。この2つの言葉を合成し、「祝福された未来へ向かう序曲」とした、と中橋氏は述べている。
曲は「祝典序曲」という副題のとおり、は冒頭部と終結部をつなげると3分ほどのファンファーレになっている。細かい場面の区切りは表記されていないが、比較的ゆっくりと進む前半部と快活でドラマチックな展開を感じられる後半部に大きく分けられる。調整的な響き、全音音階、核となる「旋律」などあり、全体的に「聞きやすい」曲だが、各楽器の動きは複雑怪奇だ。サックスによるmultiphony(重音)、オーボエによるalternate fingering(替指)など特殊奏法も用いられており、至る所で繰り返される主題にとめどない変化が加えられているおもしろみがある。要所要所で聞こえるグリッサンドを伴ったクラリネットの鋭い響きは鵲の鳴き声(あまり美しい声ではない)の模倣であり、祝典序曲としては異色の響きを味わうことができるだろう。加えて、この曲は一曲を通して「過去と現在」「現在と未来」といった異なった時空をも様々な手法によって表現している。相容れない時空同士が混ざるようなこの「滲み」はこの曲の醍醐味のひとつだと言えるだろう。 また、この曲は陸上自衛隊中央音楽隊の委嘱作品ということもあり、かなり大編成を想定されて作られた曲である(例えば、クラリネットパートは1~8thまで存在)。当楽団のような大所帯の「人数の理」を存分に生かし、今までにきいたことのないような「Blessed Promising Future(科戸の鵲巣)」を演奏できれば、と思っております。 (第45回定期演奏会) |