●グレード: 5
●演奏時間:約9分
●第23回サマーコンサート
ウォルト・ディズニーの「ファンタジア」もしくは某替え歌の影響から、極めて有名になってしまった出だしを持つこの曲は、音楽の父ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685~1750)の弱冠22,3歳頃の作品(*)である。ということは奇しくも本日、この曲を演奏する私たちとほぼ同年代なわけであり、あらためてバッハの天才性を強く感じさせる。
編曲も含めて、20世紀の音楽レパートリーが集中している吹奏楽の世界において、300年近くも昔に書かれたこの曲は、逆に新鮮であるといえる。特にフーガ部分における、ほとんど16分音符で運動し続ける旋律や対旋律の複雑な絡み合いは、古典派以降の息の長い旋律を伴奏で支える事を主体とする曲にはない、バロック音楽特有の雰囲気を感じることができるだろう。
今回使用する楽譜は、森田一浩が1999年、埼玉県伊那学園総合高等学校のために編曲したもので、通常でまわっている編曲とは異なり、アンサンブルのし易いよう若干難易度は下げられているものの、パイプオルガンの持つ多才な音色を現代日本の吹奏楽の(大型な)標準編成に合致するように置き換えるにとどまらず、例えば教会などで演奏する場合に残るであろう残響やエコーを付け加えたり、打楽器を用いて装飾を加えるなど、氏独自のアイデアが生かされている。そしてラストの和音では、まさにオルガンでは不可能なpppからfffへの巨大なクレッシェンドにより幕を閉じる。
*:直筆譜が紛失しているために、確実とは言えないが、作風によりだいたいそのくらいの作品であろうと推定されている。
(第23回サマーコンサート)