Giacomo Puccini – ジャコモ・プッチーニ
歌劇「トスカ」より第1幕、第3幕 |
●原題:TOSCA
●編曲:第1幕…鈴木英史、第3幕…飯島俊成
●グレード: 4-4.5 ●演奏時間:- ●第24回サマーコンサート
《トスカ》の原作はサルドゥの戯曲で、それを見たプッチーニは強烈な印象を受けてオペラ化を思い立った。台本作家との衝突・口論を繰り返しながらも完成した《トスカ》は、1900年のローマでの初演はあまりうまくいかなかったものの、同年トスカニーニが指揮したミラノ・スカラ座での上演は大成功を収め、今日まで人気のあるオペラである。
舞台は、1800年6月17日から翌日の夜明けにかけてのローマ。当時のイタリアでは、フランス革命に影響された統一と独立の機運を阻もうとするオーストリアの圧政の下で、自由主義者たちが弾圧と闘っていた。彼らはナポレオンによる解放を待っている。突如、フランス軍が攻め入った。一時は敗北かと思われたが、逆転したナポレオンは決定的勝利を収めることになる。この〈マレンゴの戦い〉の史実が、《トスカ》背景になっているのである。 この作品は、プッチーニのオペラのなかでもヴェリズモ(真実主義)の流れを汲むとされている。ヴェリズモとは19世紀イタリアの芸術運動で、特に庶民の日常生活を舞台に、情念の衝動に駆られた激しい行動が悲劇的結末をもたらす過程を写実的に描くことが好まれた。しかしその凄惨さの反面、プッチーニの甘美で叙情的な音楽が悲劇をより美しくドラマティックにしている。以下はそのあらすじである。
第1幕 脱獄した政治犯アンジェロッティは、逃げ込んだ教会せ旧友のマリオ・カヴァラドッシに出会う。そこへ「マリオ!」と呼ぶ美しい声。恋人である歌姫フローリア・トスカである。浮気を疑ってトスカはやきもちを焼くが、甘い言葉になだめられて帰っていく。カヴァラドッシはアンジェロッティに隠れ場を教え、彼らも去る。 脱獄犯を追って現れた残忍な警視総監スカルピアは、戻ってきたトスカに近づき、カヴァラドッシの浮気をほのめかす。嫉妬に燃え上がるトスカ。そして、群衆が壮大なテ・デウムを歌う。 第2幕 カヴァラドッシはアンジェロッティの居場所を白状するように拷問にかけられる。その様子に耐えられず、トスカは思わず隠れ場を言ってしまう。カヴァラドッシの助命を願うトスカに、スカルピアは自分のものになるよう迫る。トスカは「私は歌に生き愛に生きてきたのに」と嘆くが、とうとう彼の要求にうなずき、空砲を使って見せかけの銃殺をするように仕組ませる。しかしスカルピアが抱きしめようと両腕を広げた瞬間、トスカは彼をナイフで刺して叫ぶ、「これがトスカのキスよ!」 第3幕 夜明けが近い。処刑を待つカヴァラドッシは「星は輝き…」と、愛の思い出と絶望的な悲しみに沈んでいる。そこへトスカがやってきて、ニセの銃殺の計画を話す。もうすぐ手が届く自由への喜びにあふれ、色彩と歌の調和を世界に広めようと歌う二人。 4時の鐘が鳴った。カヴァラドッシが引きたてられていく。それを見つめながら待っているトスカ。そして、銃声が響いた。トスカは駆け寄るが、カヴァラドッシはなんと本当に死んでいた。スカルピアの死に気づいた警官たちが追ってくる。「スカルピア、神様の御前で!」と言い残し、トスカは城の胸壁から身を躍らせるのだった。
今回演奏するのは、第1幕と第3幕からの抜粋である。第1幕はアンジェロッティが息せききって駆け込んでくる様子に始まり、トスカの呼びかけ、恋人どうしの嫉妬や甘い言葉、スカルピアの邪恋に燃える心中と続き、そしてテ・デウムが力強く歌われる。第3幕では、ローマのいつもと変わらぬ静かな夜明けの描写の後に、カヴァラドッシが切々と歌う有名なアリア「星は光りぬ」。トスカとの再会と自由への喜び、真似事にすぎないはずの処刑を待つ期待と不安、鋭い銃声、そしてまさに悲劇的な終結。オペラよりもさらに急激な展開とプッチーニの流麗な旋律とあわせもつ。 (第24回サマーコンサート) |