Bert Appermont – ベルト・アッペルモント
アイヴァンホー |
●原題:Ivanhoe
●グレード: 4 ●演奏時間:約8分30秒 ●第26回サマーコンサート 『アイヴァンホー』は、18世紀スコットランドの詩人、作家であるサー・ウォルター・スコット原作の歴史小説です。舞台は12世紀のイングランド。武勇並びなき騎士アイヴァンホーを主人公とし、物語は展開されます。歴史小説でありながら時代に合わない虚構の設定が多々混じっている、とは言うものの、この『アイヴァンホー』は発表するやたちまち1週間で売切れたというほどで、スコットの諸作中人気ナンバーワンを誇る作品のようです。 【物語のあらすじ】 青年騎士アイヴァンホーはロウィーナ姫と恋仲になり、親に勘当される。その後レベッカという女性に恋をしてしまうが、アイヴァンホーにはロウィーナがいるため、それを知ったレベッカは潔く身を引く。あるとき、レベッカがさらわれる。彼女を奪い返すためにアイヴァンホーは戦いに挑む。戦いの末、レベッカを奪い返すもロウィーナと結婚。・・・終幕。 曲はⅠ.騎士道の掟(Code of Chivalry)、Ⅱ.忠誠か愛か(Loyalty or Love?)、Ⅲ.戦いと結末(Battle & Finale)の3楽章構成で、主人公アイヴァンホーの心の動きを巧く捉えています。 (第26回サマーコンサート) |
サガ・キャンディダ ~魔女狩りの7つの印象~ |
●原題:Saga Candida?7 Impressions of a Witch Hunt
●グレード: 4.5 ●演奏時間:約15分30秒 ●第34回サマーコンサート この曲はアッペルモント作曲の吹奏楽によるミュージカル「サタンの種(Seed of Satan)」の音楽より七曲を選び、再構成したものです。17世紀初頭にあった魔女狩りをモチーフとし、曲の題名は「罰するに値しない魔女」を意味するそうです。また、以下で説明する七つの楽章からなり、迫害される魔女の姿が描かれています。楽章ごとに表される数々の魅力的な場面と、アッペルモントの描く中世の怪しくもどこか不思議な音楽物語を本日はお楽しみください。 序章: 静かな木管の旋律の後、旧約聖書の一筋が歌われ、物語の幕開けを予感させます。 魔女裁判: 一楽章とは打って変わってアレグロの音楽が始まり、裁判の激しさが表現されています。 無実(愛): イングリッシュホルンから始まり、徐々に盛り上がって最後はfffで愛を大きく歌い上げます。 タンゴ: 低音群とコンガのリズムがモチーフ通りの怪しい雰囲気のタンゴを演出します。 サバト: 悪魔召喚の呪文が唱えられた後、様々な楽器のソロによって禁断の儀式の進行を感じさせます。 死: 哀愁を帯びたフリューゲルホルンのソロに続き、重苦しい空気の葬送行進曲が始まります。 転生(フィナーレ): 暗い空気から一転し、金管の壮大なメロディーとともに物語が幕を閉じます。 (第34回サマーコンサート) |
ブリュッセル・レクイエム |
●原題:A BRUSSELS REQUIEM
●グレード: 6 ●演奏時間:約16分30秒 ●第39回サマーコンサート ベルト・アッペルモント (1973~)はベルギーの作曲家であり、主に吹奏楽の分野で多くの曲を書いている。著名な曲に『交響曲第1番「ギルガメッシュ」』や、以前当団が演奏した『サガ・キャンディダ ~魔女狩りの7つの印象~』などがある。 『ブリュッセル・レクイエム』はオーストリアの Brass Band OberÖsterreich の委嘱によってブラスバンド用に作曲され、2017 年ヨーロッパブラスバンド選手権で世界初演された。本日は、その後作曲者自身によって吹奏楽版に編曲されたものを演奏する。 この曲は 2016年3月22日にベルギーのブリュッセル空港及びマールベーク駅において発生した連続爆破テロ事件を題材にしている。“Innocence” , “In Cold Blood” , “In Memoriam – We Shall Rise Again”, “A New Day” の4つの連続した楽章で構成されており、全体を通してフラン スの童謡 “Au Clair de la Lune”(月の光に)のテーマが断片的に使われている。これにより、テロ行為が引き起こした恐怖、悲しみ、怒り、無力感などが描かれている。
クラリネットのソロに始まり、ファゴットとの掛け合いを経たのちにバンド全体による“Au Clair de la Lune”のテーマが用いられた賛美歌が演奏される。美しい音楽が続くと思われた矢先、 トランペットとハイハットによる強烈な打ち込みにより不穏を感じさせる。
軍隊のようなモチーフから始まるこの楽章は、16分音符の速いパッセージによりテロの混乱が表されている。やがて一旦静かになるが、徐々に盛り上がりを見せ、短調となった “Au Clair de la Lune’ のテーマが盛大に演奏される。ホルンソロを皮切りに、厳しい雰囲気が尾を引きながらも曲は衰退し、明るい兆しを見せつつ幕を閉じる。
遠くから “Au Clair de la Lune”のテーマがトランペットによって演奏される。深みのある柔和さを感じさせたところで、悲しみを乗り越えて希望の賛美が歌われる。人々が再び立ち上がり、テ 口の恐れを克服する力を与えることを願っている。
これまでとは打って変わって快活な楽章である。ジャズ調の音楽が演奏されたのち、第3楽章のメロディがバンド全体で壮大に演奏される。その後冒頭が再現され、活気に満ちながら幕を閉じる。 (第39回サマーコンサート) |