Hardy Mertens – ハーディ・メルテンス
All the mouth-watering meals for flashing Flora, the nimble naughty hungry ghost on the loose |
●原題:All the mouth-watering meals for flashing Flora, the nimble naughty hungry ghost on the loose
●グレード: 4 ●演奏時間:約4分 ●第26回サマーコンサート
この一見して奇妙なタイトルの作品は、オランダの作曲家、メルテンスによるものである。この作曲家の名前はまだ十分に日本において浸透しているとはいえないが、様々な語法やスタイルを織り交ぜた重厚な吹奏楽作品を多く書いている、新進気鋭の作曲家であると言えよう。この大阪大学吹奏楽団も数年前に彼の作品を日本初演している。
本日演奏する本作品であるが、タイトルの後に「吹奏楽と中国伝統打楽器のために」とある。その但し書きが示すように、中国における打楽器が活躍し、一方で管楽器も非常に東洋的な響きを求められる箇所が多くある。 作品はたった四分程度のものである。しかし、音楽の表情は次から次へと変わっていく。それこそ、まさにすばしっこくて、ちょこまかと動き回るお化けさながらにである。作品の最後で奏者が「フローラ、フローラ」と叫ぶ場面もあり、シリアスな作品と言うよりかはむしろ、どこか「冗談音楽」のような印象を受ける。それはやたらに長いこの作品のタイトルを見てもお分かりいただけるかもしれない。 不思議な「お化け」の音楽を、さぁ、お楽しみあれ。 (第26回サマーコンサート) |
ウィナンガ・リ |
●原題:Winanga-li
●グレード: 5.5 ●演奏時間:約24分30秒 ●第30回サマーコンサート
この作品は、オランダ人作曲家のハルディ・メルテンスとオーストラリア人作曲家のマーク・スマードン、そしてマークの娘でベルギー在住の画家サラ・スマードンのコラボレーションによって生まれました。 サラとハルディは、1998年に初めて出会って以来お互いに尊敬し合える良き友人であり、コラボレーションして自然と人々、そして神に関するひとつの作品を生み出そうと計画しました。サラは自らの故郷であるオーストラリアをモチーフとして使おうと考えており、そこにサラの父親であるマークも参加したことで、オーストラリアの民族音楽と西洋のクラシック書法が融合した作品、「ウィナンガ・リ」が誕生することとなりました。「ウィナンガ・リ」とはアボリジニーの言葉で、「聞き、聴き、理解し、覚えること(To hear, to listen, to know, to remember)」という意味です。 3人はそれぞれの役割を決め、マークはいくつかのメロディを、サラはモチーフとなる絵を描き、ハルディがそれらの素材をもとに曲を創るという事になりました。その結果として、曲中では随所にマークの書いた9つの旋律が使われており、また全体としてはサラの描いた4枚の絵を基として4つの楽章から構成されています。それぞれの楽章は、「生命の息吹」「サラの魂」「虹の踊り」「ウィナンガ・リの始まり」とタイトル付けられています。
第1楽章では生命が誕生する様子を、生まれてくるすべての命は大きな一つの源を分け合っており、見えない何かで繋がっているという生命観を基に描かれています。 第2楽章はハルディがサラに捧げる曲となっており、ハルディの見た夢の世界が描かれております。 第3楽章では過去・現在・未来のオーストラリアの人々に焦点が当てられており、民族の違う多様な人々を描きつつ、すべての人々は大いなる源の元に繋がっているというアボリジニーの生命観を中心に構成されています。 第4楽章は、アボリジニーの信じる神と神話の内容を表した曲になります。
このように、この曲はアボリジニーの思想を中心に非常に様々な内容を盛り込んだものになっております。またアボリジニーの民族楽器等を効果的に使っており、単に民族音楽の上っ面をなぞっただけに留まらない点でも非常に素晴らしいです。今回は、この様な作品の日本初演が出来たことを非常に喜ばしく思います。 (第30回サマーコンサート) |