Dmitry Shostakovich – ドミートリー・ショスタコーヴィチ
バレエ組曲 ボルト 作品27 1934年版 |
●原題:The Bolt Suite from the Ballet Op. 27a (1934 Version)
●編曲:木村吉宏
●グレード: – ●演奏時間:約18分 ●第26回サマーコンサート
作曲者のショスタコーヴィチ(1906~1975)は20世紀ソ連を代表する作曲家である。生涯にわたって15の交響曲を始め、オペラ、弦楽四重奏曲、協奏曲など、大変多くの作品を残している。彼の時代のソ連はかの「スターリン体制」下にあり、芸術家に対する統制も非常に厳しかった時代である。そのような時代を通じて彼は常に政治的な圧力、要請などと微妙な関係を保ちながら作曲活動を行っていた。ちなみに生没年を見ていただければお分かりの通り、彼は本年、生誕百周年を迎えている。 とりわけ、交響曲が有名なショスタコーヴィチにあっては、我々は彼のことを重厚な作品を書く、シリアスな作曲家だと言う風に捉えてしまう。確かに彼の上で示したような作品は非常に難解な主題と形式を持っており、決して「聴き易い」音楽であるとは言い切れない。しかし、彼の作曲家としての表情はそれだけでなく、非常に大衆的な要素も兼ね備えているのである。ショスタコーヴィチがジャズを書くということもあったし、映画音楽なども手がけている。また、軽い劇作品の音楽も担当したりと、その活躍の幅は広い。近年特に彼のそういった作品に対する評価が高くなっているように感じられる。バレエ音楽」もそういった作品と同様に大衆向けの作品として書かれた。 彼はバレエ音楽は3作品作っている。しかし、バレエとして成功を収めた作品はひとつもなかった。この「ボルト」も決して評判だったと言うわけではない。バレエとしては初演以来ほとんど再演されておらず、台本の不備が原因で酷評されていた。 バレエ自体は失敗に終わったが、彼は音楽を翌年には組曲として発表する。1933年にまず初演されるがそれは好評であった。その後にも彼は組曲に手を加えて、1934年に本日演奏する組曲版として発表するのである。両版の違いを簡単に述べるなら、まず、当初の版では組曲の各楽章の題がバレエの舞台に関係するものであったのに対し、1934年版では一切、ストーリーとは関係のない言葉に置き換えられたという点、そして、もともと八楽章制であった作品を六楽章に改めたと言う点である。 音楽自体は非常に明快でわかりやすい。だが、それでいてたまに垣間見える風刺的な表情や、シリアスさがショスタコーヴィチの作曲家としての優れた二面性を思わせる。本作はそのような音楽である。
各楽章は以下の通り、但し、本日は第五楽章「間奏曲」は演奏しない。さらに括弧の中に初演版の楽章とタイトルを付記しておく。 1.序曲(一楽章「序曲」) 2.ポルカ(二楽章「官僚の踊り」) 3.ヴァリエーション(三楽章「荷馬車引きの踊り」) 4.タンゴ(四楽章「コゼルコフの踊りと彼の友人たち」) 5.間奏曲(五楽章「破壊者」) 6.フィナーレの踊りと大団円(八楽章「フィナーレの踊りと大団円」) (第26回サマーコンサート) |