Ralph Vaughan Williams – レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ
トッカータ・マルツィアーレ |
●原題:Toccata Marziale
●グレード: 6 ●演奏時間:約5分20秒 ●第41回定期演奏会
イギリスの作曲者、レイフ・ヴォーン=ウィリアムズの代表的な吹奏楽曲を挙げるとすれば「イギリス民謡組曲」か、この「トッカータ・マルツィアーレ」になるでしょう。「イギリス民謡組曲」がその名の通りイングランド民謡の旋律をモチーフにした比較的親しみやすい曲であるのに対し、「トッカータ・マルツィアーレ」は対位法が随所に散りばめられた作曲技法的に興味深い曲となっています。これら2曲がわずか1年違いで作曲されたということも忘れてはならないでしょう。
冒頭において、低音・中音楽器による力強いテーマが示されます。このテーマこそが「トッカータ・マルツィアーレ」の源と言っても過言ではありません。事実、このテーマは曲中で形を微妙に変えつつ何度も姿を現してきます。曲はこの後木管楽器を中心とした楽器群でlegato(滑らかな)の音楽が奏でられ重厚なサウンドで進んでいきますが、突如としてフルート、ピッコロ等による軽く、少しおどけたメロディも顔を覗かせます。 その後も曲は冒頭で示されたテーマが核となり続けますが、メロディが和音で進行し、低音楽器で始まったテーマが少しだけずれて中音楽器でも始まり、さらにずれて高音楽器へ……、とこの様にマンネリ化しがちな一つのテーマを使い続ける曲の難しさを見事にクリアしています。終盤では一瞬のritardando(テンポをゆっくりしていく)の後、曲中でこれまでに使われてきた場面がダイジェストで再登場していきます。しかしこの部分は完全な再現ではなく、途中に少し違う和音を挟んでみたりリズムを動かしてみたりなど、堂々たるフィナーレの中にちょっぴり作曲者の遊び心が加わった面白い終盤となっています。 コンサートの始まりとして、一味違うイギリス独特の気高さを持ったこの曲をお楽しみください。 (第41回定期演奏会) |