Ferrer Ferran – フェルレル・フェルラン
シンフォニエッタ第1番「山のこだま」 |
●原題:Echo de la Montagne – Sinfonietta N.1
●グレード: 5 ●演奏時間:約21分40秒 ●第41回定期演奏会
今作品は、スペインのヴァレンシア出身のフェレル・フェルラン(1966~)によって2004年に作曲されました。彼の代表作「交響曲第2番『キリストの受難』」を大阪大学吹奏楽団は過去に二度演奏しています。他にも、彼は「ジャンヌ・ダルク」など多彩な作品を手掛けています。 今作品は、オランダの”De Koninklijke Harmonie De Berggalm”の委嘱作品です。このバンドは1879年に”Echo de la Montagne”という合唱団として結成され、1919年に現在の名称のバンドに変更されました。その創立125周年を記念して合唱団の名前を冠した今作品は、2004年スペインで行われたフランシスコ・グラウ作曲コンテストで優勝しました。
どれも情緒豊かで感動的な珠玉の全3楽章で構成されています。第一楽章「La legende (The Legend)」は、作曲者が伝説でかつて存在していたといわれる不思議な山の話から着想を得た楽章となっています。その山について、地元では以下のような伝説があります。
冒頭は厳かに始まります。楽章全体が一つの歌劇のようで、重厚な始まりは伝説の幕開け、といったところでしょうか。4分の4拍子と8分の6拍子が入り乱れる部分は2つの部族の戦いを、中間の強奏は神の怒りを、後半の穏やかなフレーズは山の静けさと伝説の幕引きを描写しているかのようです。緩急の激しい楽章ですが、その分他の楽章と比較してよりドラマティックに仕上がっています。 第二楽章「La belle nature (Beautiful Nature)」は山の自然の素晴らしさ、とりわけ自然の芳しさと色彩を賛美している楽章です。前の楽章とは打って変わって明るめで穏やかな曲調ですが、音の濃淡の使い分けで森の情景がダイナミックに描き出されていて、作曲者は見事に森の外れの木々が生い茂る場所から鬱蒼とした中心部までを繊細に描き切っています。 第三楽章「La foret fantastique (The Fantastic Forest)」では、作曲者のイメージする「ドワーフや妖精たちが、山の素晴らしい緑の中跳ね回りながらいたずらしている」光景が、同じ主題を何度も繰り返して紡ぎ出されていきます。転調を繰り返すうちに前楽章の主題が入り交じり交錯するのは、どこかノスタルジーを感じるとともに、軽快なリズムと次々と変容するメロディのクロスが、最終楽章をフィナーレとして華々しく飾っています。
同じく山岳を題材とした「モンタニャールの詩」(ヤン・ヴァン・デル・ロースト)などと対比してみると、特徴的なダイナミクスの使用法と曲の盛り上げ方がお分かりいただけると思います。劇的な、という言葉がぴったりな今作品を、演奏会の最後の曲目としてどうぞお楽しみください。 (第41回定期演奏会) |