Derek Bourgeois – デリック・ブージョワ
交響曲第6番「コッツウォルド・シンフォニー」 |
●原題:Symphony No. 6 A Cotswold Symphony
●グレード: 6 ●演奏時間:約31分 ●第35回定期演奏会、第34回サマーコンサート
この曲ではイングランドの丘陵地帯であるコッツウォルズの田園風景、秋に立ち込める霧や壮大な景色が表現されています。6つの楽章によって構成されていますが、各々の楽章は切れ目無く演奏されます。イギリスの素朴な田園風景と隠されたローマの歴史を思い浮かべながらお聴きください。
1.パストラール:夜明け:グロスターの谷間から霧が晴れて(Pastoral : Dawn : Mists rise over the Vale of Gloucester) 霧のかかったグロスターの渓谷を表現しています。不協和音から始まり、揺らめくような曖昧な旋律とは対照的に、のちに各楽章で様相を変え何度か現れる明確な主題が登場します。 2.メイポール(Maypole) イギリスのメイポールダンスを表現しています。楽章の始まりでは華麗な主題が軽快に演奏され、徐々に壮大な旋律となりますが、その陽気な雰囲気は突如、不愉快なものに変わり騒がしくなり、次の楽章へと続きます。 3.ローマ軍の行進(The Iron March of Rome) テンポの遅いこの楽章は、田園を横切る冷酷なローマ帝国の軍隊の行進を表現しています。低音から始まる旋律はほかの楽器により受け継がれ、徐々に騒がしく力強くなります。一変して行進曲風の旋律が現れ、徐々に雰囲気を変えながら、テンポを上げて次の楽章へと繋がります。 4.教会の鐘(Church Bells: As sure as God’s in Gloucestershire) 楽章の副題はイギリスの作曲家・詩人であるアイヴァー・ガーニーの作品からの引用で、チャイムなどを使った三拍子で教会を想起させる儚い旋律が奏でられます。楽章中盤では鐘の音が鳴り止み、静かにこの曲の主題に引き戻された後、次の楽章へと続きます。 5.古い町:グロスター(The Old City : Gloucester) この楽章は、ガーニーの詩から受けた印象がそのまま表現され、複雑な構成の中で軽快で幸せな雰囲気の旋律が奏でられます。徐々に行進曲風の堂々として落ち着いた様相に変わり、イギリスの伝統が表現されています。楽章の終わりでは主題が演奏されて最終楽章へと進みます。 6.終章:パストラール(Epilogue : Pastoral) 田園風景が表現され、初めのと同じ旋律が再び現れますが、ここでは曲の終わりに相応しく壮大な様相となっており、さらに「ローマ軍の行進」と似た旋律で堂々と曲が締めくくられます。 (第34回サマーコンサート) |
アポカリプス |
●原題:Apocalypse, Op.187
●グレード: 6 ●演奏時間:約19分 ●第32回サマーコンサート
この曲は2003年にブラスバンドの曲として作曲されました。作曲者のデレク・ブージョワは多くの名曲を発表しているイギリスの作曲家です。ブージョワは吹奏楽の作品のみならず、管弦楽やブラスバンド、室内楽などの幅広いジャンルの作品を書いています。また、ブージョワの作品はヨーロッパの音楽コンクールで課題曲として取り上げられることが多く、そのためかなりの難易度を誇る曲が多いことも特徴です。大阪大学吹奏楽団はこれまでの演奏会で、”Wind Blitz”や”交響曲第4番「ワイン・シンフォニー」”(日本初演)といったブージョワの作品を取り上げてきましたが、今回演奏する”アポカリプス”も相当な大曲となっています。
「アポカリプス」とは「黙示」という意味で、ユダヤ教やキリスト教において、神が選ばれた預言者に対して真理や神の意志を啓示することを指します。有名なものとしては「ヨハネの黙示録」があり、内容は多岐にわたりますが、その多くは世界の終末について書かれています。
曲はいきなり全体合奏のフォルテから始まります。この冒頭のテーマと、少ししてから演奏されるテーマの二つが、曲の全体を通して演奏されます。音楽が落ち着いた後は、特徴的なリズムの伴奏とともに複雑なアルトサックスとトランペットのソロが出現します。もう一度冒頭のテーマが演奏されると、拍子が次々に変化する場面に移ります。そして、冒頭で演奏された二つ目のテーマがだんだんと激しさを増して最高潮に達すると、再び弱奏での演奏となります。その後、ホルンとトロンボーンのソロが終わると、突然トロンボーン全員での下降音形がフォルテシモで鳴り響きます。再び冒頭の二つ目のテーマが演奏された後、世界の終末を表すかのような激しい全体合奏となり、一瞬の落ち着きの後、再び曲は激しさを増していき、演奏は最後を迎えます。 前述のとおり、難曲が多いとされるブージョワの作品の中でもかなりの演奏技術を要する曲となっていますが、ブージョワの魅力が最大限に詰まった作品でもあります。 (第32回サマーコンサート) |